
住空間学③|住空間のスタンダード【前編】
インテリアを考えるコラム【住空間学】
空間デザイナー、インテリアデザイナーの資格を持つ〈空間コンダクター〉駒井佑至が語る、美しい暮らしとなる〈住空間〉とは。
空間作りの中で難しいのは、
足し算よりも引き算。
あらゆる情報にアクセスしやすくなった現代では、様々なデザインに気軽に触れられ、好きなデザインと出会いやすくなりました。 もちろん、好きと思えるものはどんどん取り入れていただきたいですが、ここで重要なのは、一つひとつのデザインだけでなく、それらが層となり空間となったときに生まれるトータルバランスです。
これは、トータルバランスのために我慢するという意味ではなく、皆さんが一番心踊るものにスポットライトを当てるためには取捨選択が重要ということです。

居心地の良い住空間に欠かせないのは
確かな「インテリア選び」。
空間づくりをするためには、インテリアが重要な要素になってきます。
インテリアは少し意識するだけでも、さらに良いものへと成長します。
「建物にこだわりたいので、インテリアは何でもいい」という意見を時々耳にすることがありますが、逆に「インテリアにこだわりたいので、建物は何でもいい」という意見はほとんどお聞きすることがありません。
施主は無意識のうちに「建物の自体の打ち合わせが上手くいけば、心地よい暮らしが待っている」と感じてしまいがちですが、これでは本当の意味での理想の暮らしをつくることができません。
昨今では自宅で過ごす時間が増え、以前よりインテリアを意識する方が増えてきていますが、古くから家具や照明について暮らしの中で知恵を育んできた北欧諸国と違い、日本人にとってインテリアはまだまだ馴染みが少ないものなのかもしれません。
実際に日本では、インテリアを衣服のように時間をかけて選び試してきた経験が少ない方がほとんどではないでしょうか。そのため、家づくりをきっかけにインテリアを意識したはいいが、正直何を選んで良いのかよく分からないという方も少なくないと思います。
「分からない」と「苦手」という感覚は、とても近い距離にあります。
その逆も然りで、少し知って意識するだけで、空間の居心地が明らかに良くなり純粋な楽しさに変わっていくと思います。

インテリア選びは、住空間づくりそのもの。
誰しも、自分が暮らす住空間は、居心地のいいものにしたいと思っています。
その居心地のよさというのは、外見の建物だけにこだわっても手に入るものではありません。
インテリアを念頭に置かない家づくりをして、終盤になってようやくインテリアをイメージしはじめた頃に「もっとこうしておけばよかった」となることも少なくありません。
家具や照明というインテリアと向き合うことは、自分の理想とする暮らしについて考えるきっかけに必ずなります。 家具や照明は簡単に買い直しがきくものではないため、10年後20年後にも「やっぱりこれを選んでよかった」と感じていただけるモノとぜひ出会っていただきたいと思っています。
日本の家づくりにおいてインテリアはまだまだ後回しにされがちな存在ですが、毎日の暮らしの中で常に視界に入ったり直接触れたりするモノなので、大切に選んでいただけたらと思っています。
次回コラム「住空間のニュースタンダード【後編】」では、インテリア選びの際に意識するだけで住空間がもっと良いものになる内容に絞ってご紹介させていただきます。
たくさんのつくり手の方がおっしゃるように、家づくりに正解はありません。
「正解がないから面白い」と捉えるのもひとつですが、すぐに実行できるようなTIPS(コツ)も参考までに知っていただき、少しでも皆さんの過ごす空間の居心地のよさを生むきっかけになれば幸いです。
執筆者プロフィール
駒井佑至
空間デザイナー、インテリアデザイナーの資格を持つ「空間コンダクター」。インテリアの提案や家具デザイン、リノベーションの設計など、空間づくりに携わる。インテリアの話題を発信するInstagramアカウントも注目が集まる。
Instagram:@yushikomai